実業の栞(じつぎょうのしおり)凡例

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此書[このしょ]昨年の四月より同じき五月にわたれる読売新聞紙上に、「渡世[とせい]のいろいろ」と題して連載したりし記事三十五篇ほどありしに基[もとづ]き、そを訂正の上[うえ][あらた]に後半三十有余篇の稿を補[おぎな]ひ、標題をさへ改めて斯[か]く一部と為[な]したるものなり。

書中記せる各商の状況、或は詳細なるあり、或は稍[やや]簡明なるものありて其[その]体裁一ならずと雖[いへど]も、何[いづ]れも経験ある営業者の談話によらざる処[ところ]なければ、江湖[こうこ]此書により多少稗益する処あるべきは素[もと]より疑はず。

本書挿入の考古画は清水晴風[しみずせいふう]翁の手に成りたるもの、本文読過の際各商昔時[せきじ]の風俗を知るの一助たるべし。

著者 識

▼昨年…明治36年(1903)
▼江湖…世の中。世の中の人々。
▼清水晴風…おもちゃ研究家、随筆家。戯文を仮名垣魯文に絵画を安藤広重(三世)に習ってもいた風流の人。この本では職人歌合などに出て来る商人の姿などを古画から縮摸した絵を描いています。
校註●莱莉垣桜文(2011) こっとんきゃんでい