太平楽蛮語競(たいへいらくばんごくらべ)

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太平楽蛮語競

倭朝悪口[こっちのわるくち]異国[あっちの]くわあどとんぐ

行司

東 大日本六拾余州 
西 大西洋五大洲 

大関 大べらぼうめ
関脇 さいづちやらう
小結 くそをくらへ
前頭 けつでもしゃぶれ
前頭 よこつらをはりまげる
前頭 だおたふく
前頭 のんだくれやらう
前頭 大ばかとんちき
前頭 しわんぼうおやぢ

前頭 かってへぼう
前頭 でくのぼう
前頭 でこあたま
前頭 どてっぱらをけやぶる
前頭 はらみおんな
前頭 とりあげばばぁ
前頭 あだなしんぞう
前頭 はなよめご
前頭 すそっぱりおんな
前頭 おさんどん
前頭 おなさけどころ

前頭 かとこの中あし
前頭 なまづぶるひ
前頭 たぬきおせう
前頭 おほかみもの
前頭 もっかうふんどし
前頭 大きんたま
前頭 火ふきだるま
前頭 いろのちはぶみ
前頭 あつかましい
前頭 しりのあな
前頭 女郎かい
前頭 くそさらい

前頭 よみうり
前頭 まおとこ
前頭 たまごの四かく
前頭 みそかのつき
前頭 しらみたかり
前頭 あばたつら
前頭 かさっかき
前頭 けんじつつかひ
前頭 ひきゃく
前頭 うらないしゃ
前頭 しょくにん
前頭 あきんど
前頭 やぶいしゃ
前頭 ゑかき
前頭 さくしゃ

西

大関 ごろをとすぱある
関脇 はあめるまん
小結 てれつきまあるぺく
前頭 あらるすがっとするぷ
前頭 あかんけしくどころむ
前頭 すれくとふやこん
前頭 とろんくあると
前頭 ごろをとげっきすと
前頭 きいりふととでりんぐ

前頭 めらあっぱるぷ
前頭 ぽっぴい
前頭 ごろをどころいん
前頭 せいでぼいくふしとそ
前頭 すわんげるふらう
前頭 ふるしどふらう
前頭 もをいまあぐど
前頭 ふるうむちどんすはろうぶついど
前頭 をんこいせふろう
前頭 けういんめいど
前頭 ふろしえれへきらっど

前頭 まんねすもきるど
前頭 あるどべびんぐ
前頭 だすはぁぶ
前頭 ふるふまん
前頭 こるとおんとるふならぐ
前頭 ごややとさぁとはるれん
前頭 たむぷこしげる
前頭 そんねぶりひふ
前頭 いづるああんけしくど
前頭 ああるそがっと
前頭 ううるはんてである
前頭 なくとうつるける

前頭 まるすまん
前頭 あふるすとまる
前頭 えいるひいこん
前頭 てるかうどぅまんど
前頭 ろいすからあん
前頭 ほいむすあんろうがへる
前頭 へえにやすしいす
前頭 しけるむめへすてる
前頭 ぽすと
前頭 ほをるせっぺる
前頭 あむはくつまん
前頭 ごうぶまん
前頭 くわつくねうれい
前頭 しきるでる
前頭 はんどてる

おらんだ 蛮名 あるらんど
おろしや 蛮名 ろしあ
あめりか 蛮名 みりうん
南京 まいどきん
いぎりす 蛮名 ゑんげらんど
ふらんす 蛮名 ふらんくれいき

文久ごろ(1861)以後に版行されたと思われる見立番付形式の一枚摺りです。
「悪口」とはいうのは、「洒落言葉」や「軽口」の語彙ととらえたほうが適切ですが、最近では怒られちゃうものも含まれてますね。
西の方に列挙されてるなぞの蛮語は、当時売られていた何の典拠もない外国語の一枚摺りと同様で、意味のわからないウソの唐人ことばをならべてあるだけのようです。(当時は、立川談志が寄席で唐人ことばと称して、意味不明のことばを歌うなどの芸をしていたそうなので、そちらと関連はあるかも知れません)


▼だおたふく…駄おたふく。おたふくの出来そこない。
▼しわんぼうおやぢ…吝嗇坊親爺。けちんぼ。
▼あだなしんぞう…婀娜な新造。
▼たぬきおせう…狸和尚。
▼おほかみもの…狼者。
▼もっかうふんどし…もっこうふんどし。畚褌。布の部分の丈が短い。
▼火ふきだるま…火吹き達磨。鉄などで出来たたまご型の道具。かまどや囲炉裏の灰の中に刺して、水蒸気で火の勢いを増すもの。
▼いろのちはぶみ…色の痴話文。
▼よみうり…読売。一枚摺りや事件の唄本などを節をつけてよみあるきながら売ってたひとたち。読売屋。
▼たまごの四かく…卵の四角。ありえない。遊女たちの使う嘘を言った「女郎のまことと卵の四角あればみそかに月が出る」の文句から。
▼みそかのつき…晦日の月。出るはずのないもの。嘘。
▼けんじつつかひ…剣術使い。
▼ぽすと…Post?

校註●莱莉垣桜文(2012) こっとんきゃんでい