御飯の炊き方百種(ごはんのたきかたひゃくしゅ)

はしがき
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蕎麦飯

  材料の分量は、白米一升に就[つ]いて、水一升、新蕎麦の引ぬき米の十分の一の割合とする。その炊き方は、新蕎麦の引ぬきを桶の中に入れて水で手早く洗って笊[ざる]にあげ、その侭で水気[すゐき]をきって置く。それから御飯を炊くには、ほろほろ加減に硬[こわ]めに炊いて、それが炊きあがったら浅い桶の中へ移し易[か]へ、之[これ]に新蕎麦の引ぬきをまぜて能[よ]くかきまわし、それから之[これ]を蒸籠[せいろ]の中へ入れて暫[しばら]く蒸し、十分ばかりも経[た]ったら、御飯を飯櫃[おはち]に移し換へるのである。この飯の加薬[かやく]には、線[せん]ぎりの葱[ねぎ]陳皮[ちんぴ]、山葵[わさび]みぢん柚皮[ゆず]、粉蕃椒[こなたうがらし]などがよい。

▼引ぬき…殻をとりさったそばの実のこと。
▼加薬…ごはんのうえにのせる薬味。
▼陳皮…みかんの皮をお日様に干したもの。
▼みぢん柚皮…ゆずの皮をおろしたもの。
校註●莱莉垣桜文(2010) こっとんきゃんでい