御飯の炊き方百種(ごはんのたきかたひゃくしゅ)

はしがき
目次

もどる

五目飯

  五目飯の炊き方は、米一升に対する水加減は水九合五勺に酒五勺を加へ、一升に一升の水加減となるのである。御飯は稍[や]や硬目[こわめ]に炊かないと、中へ種々[いろいろ]水分を含んだ材料を入れるのだから手加減を要する、飯の炊き方は只だ硬目[こわめ]に水加減をする。

  中へ入れる材料としては牛蒡[ごぼう]糸蒟蒻[いとこんにゃく]、人参、先づこの三品[ぴん]を細[こま]かに切って一寸[ちょっと][ゆ]で、それに椎茸[しいたけ]を加へて鰹節[かつぶし]の煮汁[だし]に味淋[みりん]を割って醤油を程良くつける、煮方は少し辛[から]めに煮付けるが好[よ]い、煮込み五目の飯は之れを御飯と一所に炊き込むのである。

  又御飯を炊きあげて、それへ以上の品を煮付けたるものを掻き交ぜ、別に茹でた三ッ葉などを細[こま]かに切って振りかけ、之れにて五品となる。蒲鉾[かまぼこ]を切り込んだのや、魚[うを]の身を入れたのがある。中へ入れるものは各自の自由であっ、海苔[のり]もよい、要するに材料を多く使はず美味[おいし]く出来あがらすが上手である。

▼糸蒟蒻…しらたき。
▼五品…牛蒡、糸蒟蒻、人参、椎茸、三ッ葉で五品。
▼上手…腕のよさ。
校註●莱莉垣桜文(2010) こっとんきゃんでい