画作 神屋蓬洲 Kamiya Hosyu
版元 河内屋太助 ▼ほか
文化9年(1812)
神屋蓬洲が作と画の両方を手がけた読本(よみほん)で、角書きをふくめた外題は『観音利生天縁奇遇[かんのんりしょうてんえんきぐう]』です。
足利時代を舞台にした物語で、鬼塚道見[おにづかどうけん]という悪者によって滅ぼされてしまった赤松家の家臣の子・米吉(のちに元服して赤松春之[あかまつはるゆき])を主人公にしていて、その▼敵討ちを果たすまでの紆余曲折が描かれています。
神屋蓬洲(かみやほうしゅう)は江戸のひとで、春川栄山(はるかわえいざん)の弟子で春川五七(はるかわごしち)という名前でも活躍していて、絵の腕も達者だった人物。現在でもよく知られている「野風」を描いたこの作品の▼口絵は、当時山東京伝や式亭三馬なども読本に取り込んでいた銅版画のリアルな描法を加味していて、異彩を放っています。