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今昔画図続百鬼(こんじゃくがずぞくひゃっき)巻之中

巻之上
巻之中
巻之下

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○不知火[しらぬひ]古戦場火[こせんじゃうひ]
青鷺火[あをさぎひ]○提灯火[ちゃうちんのひ]
○墓[はか]の火○火消婆[ひけしばば]
○油赤子[あぶらあかご]○片輪車[かたわくるま]
○輪入道[わにうどう]○皿かぞへ
○陰摩羅鬼[をんもらき]船ゆう霊
○人魂[ひとだま]○川赤子[かはあかご]
○古山茶[ふるつばき]の霊○加牟波理入道[がんばりにうどう]
○雨降小僧[あめふりこぞう]○日和坊[ひよりぼう]
○青女房[あをにょうぼう]○毛倡妓[けじゃうらう]
○骨女[ほねをんな]

▼古戦場火…本文で「こせんじょうのひ」となってる点に注意。
▼青鷺火…本文で「あおさぎのひ」となってる点に注意。
▼船ゆう霊…本文で「舟幽霊」となってる点に注意。

不知火[しらぬひ]

筑紫[つくし]の海にもゆる火にて景行天皇の御船[みふね]を迎[むかへ]しとかやさけば歌にもしらぬひのつくしとつづけたり

▼筑紫…九州。
▼景行天皇…景行天皇の18年、天皇の一行が筑紫の国から船に乗ったらば海が四方まっくら。困っているとふしぎな火が照らしてくれて進む事が出来たという『日本書紀』などにある話を引いたもの。
▼歌にも…和歌で「しらぬひの」が「つくし」の枕詞になっていることを引いたもの。

古戦場[こせんじゃうのひ]

一将功なりて万骨かれし枯野[かれの]には燐火[りんくは]とて火のもゆる事あり是は血のこぼれたる跡よりもえ出る火なりといへり

▼一将功なりて万骨かれ…一将功成万骨枯。一人の率いる軍が名を成すために何万の犠卒が生じるというたとえ。曹松の詩にある一句。

青鷺火[あをさぎのひ]

青鷺の年を経[へ]は夜飛[よるとぶ]ときはかならず其羽[そのはね]ひかるもの也[なり]目の光に映じ嘴[くちばし]とがりてすさまじきと也[や]

▼青鷺の年を経し…青鷺は狐や狸などといった動物のように化けて、ひとを驚かしたりすると考えられていました。

提灯火[てうちんひ]

田舎などに提灯火とて畔道[あぜみち]に火のもゆる事あり名にしおふ夜の殿の下部[しもべ]のもてる提灯にや

▼夜の殿…狐の異名のひとつ。

墓の火[はかのひ]

去るものは日々にうとく生ずるものは日々にしたし古きつかは犂[すか]れて田となりしるしの松は薪[たきぎ]となりても五輪かたちありありと陰火のもゆる事あるはいかなる執着の心ならんかし

▼去るものは…『文選』の「去者日以疎 生者日以親」を引いたもの。亡き人は時とともに忘れられてしまう、という句。
▼古きつかは…『文選』の「古墓犂為田 松柏摧為薪」を引いたもの。時が過ぎ去ってしまった墳墓はやがて姿を無くす、という句。
▼五輪…五輪塔。墓石のかたちのひとつ。
▼かたちありありと…『文選』にあるお墓のはかなさに対して、まだ墓石があるのにぼうぼうと陰火が出るコチラは妙ですなということ。

火消婆[ひけしばば]

それ火は陽気なり妖は陰気なりうば玉の[よ]のくらきには陰気の陽気にかつ時なれば火消ばばもあるべきにや。

▼火消婆…『怪物画本』(1881)では「ふっけし婆々」という名前で同じ絵が描かれています。
▼うば玉の…黒いものの枕詞、ここでは「夜」にかかっての登場。

油赤子[あぶらあかご]

近江国大津の八町に玉のごとくの火飛行[ひぎゃう]する事あり土人云むかし志賀の里に油をうるものあり夜毎に大津辻の地蔵の油をぬすみけるがその者死[しし]て魂魄[こんはく]炎となりて今に迷ひの火となれるとぞしからば油をなむる赤子は[この]もの再生せしにや

▼玉のごとくの火…火の玉。
▼此もの…前半で解説されてる火の玉。
▼再生…うまれかわり。

片輪車[かたわくるま]

むかし近江国甲賀郡によなよな大路[おほぢ]を車のきしる音しけりある人戸のすき間よりさしのぞき見るうちにねやにありし小児いづかたへゆきしか見えずせんかたなくてかくなん「つみとがはわれにこそあれ小車のやるかたわかぬ子をばかくしそ その夜[よ]女のこゑにて やさしのひとかなさらば子をかへすなり とてなげ入れけるそののちは人おそれてあへてみざりしとかや

▼むかし近江国甲賀郡に…『諸国里人談』()にあるもの。
▼ねや…閨房、寝室。

輪入道[わにうどう]

車の轂[こしき]に大なる入道の首つきたるがかた輪にてをのれとめぐりありくありこれをみる者[もの]魂を失ふ此所[このところ]勝母[しゃうぼ]の里と紙にかきて家の出入の戸におせばあへてちかづく事なしとぞ

▼車の轂…車輪の軸の部分。
▼入道…お坊さん。
▼をのれとめぐりありく…ひとりでに動き回る。
▼此所勝母の里…『淮南子』の「曽子至孝不過勝母里 墨子非楽不入朝歌」を引いたもので、『文選』の「墨子迴車」の注にも前述の文が挙げられていたりします。そんなところから、車を引き返させるおまじないとして故事つけられているようです。

陰摩羅鬼[をんもらき]

蔵経の中に初[はじめ]て新[あらた]なる屍[しかばね]の気変じて陰摩羅鬼となると云へりそのかたち鶴の如くして色くろく目の光ともしびのごとく羽をふるひて鳴声[なくこえ]たかしと清尊録にあり

▼蔵経…大蔵経。「蔵経の中に」以下に引かれているものも『清尊録』にある文。
▼清尊録…『清尊録』にある「則一物如鶴色蒼黒 目炯々如灯 鼓翅大呼」を引いたものですが、文は林羅山『怪談全書』(1698)にある『清尊録』の訳文を引いたものです。

皿かぞへ[さらかぞへ]

ある家の下女[げぢょ]十の皿を一ッ井におとしたる科[とが]によりて害せられその亡魂よなよな井のはたにあらはれ皿を一より九までかぞへ十をいはずして泣叫ぶといふ此[この]古井[こせい]播州[ばんしう]にありとぞ

▼はた…わき、近く。
▼古井…古井戸。
▼播州…播磨国。姫路に伝わるお皿を数える「お菊」の幽霊や、芝居の『播州皿屋敷』などを引いたもの。

人魂[ひとだま]

骨肉[こつにく]は土に帰[き]し魂気[こんき]の如きはゆかざることなしみる人[ひと][すみやか]下がへのつまをむすびて招魂[せうごん]の法を行[おこな]ふべし

▼骨肉土に帰し…『礼記』の「骨肉帰復于土命也 若魂気則無不之也」あるいは、『荘子集釈』にある「魂魄往天 骨肉帰土」などを引いたもの。たましいはぷかぷかと浮かぶよ。
▼下がへのつまをむすびて…着物の下褄をむすぶのは平安ごろ、たましいを留めるおまじないとされていた事を引いたもの。

舟幽霊[ふなゆうれい]

西国または北国にても海上の風はげしく浪たかきときは波の上に人のかたちのものおほくあらはれ底なき柄杓[ひしゃく]にて水を汲[くむ]事ありこれを舟幽霊といふこれはとわたる舟の楫[かぢ]をたえてゆくえもしらぬ魂魄[こんはく]の残りしなるべし

▼西国…九州。
▼北国…北陸。
▼とわたる…水の上を渡ってゆくこと。
▼魂魄…たましい。

川赤子[かはあかご]

山川のもくずのうちのに赤子のかたちしたるものありこれを川赤子といふなるよし川太郎川童[かはわらは]の類ならんか

▼川太郎…かっぱの一名。
▼川童…かっぱの一名。

古山茶の霊[ふるつばきのれい]

ふる山茶[つばき]の精[せい]怪しき形と化して人をたぶらかす事ありとぞすべて古木[こぼく]は妖をなす事多し

加牟波理入道[がんばりにうどう]

大晦日の夜[かはや]へゆきてがんばり入道郭公[ほととぎす]と唱ふれば妖怪[ようくわひ]を見ざるよし世俗のしる所也もろこしにては厠神[かはやのかみ]の名を郭登[くはくとう]といへりこれ遊天飛騎大殺将軍[ゆうてんひきだいさつしゃうぐん]とて人に禍福[くはふく]をあたふと云[いふ]郭登郭公同日の談なるべし

▼厠…おべんじょ。
▼もろこし…漢土。
▼郭登…大陸のお便所の神様。『居家必用事類全集』などにあるもので「廁神姓郭名登 是遊天飛騎大殺将軍 不可触犯 能賜災福 凡祭祀不可応呼神名避之吉」とあります。
▼禍福…わざわいとしあわせ。
▼同日の談…まるっきり違うもの。不同日論。

雨降小僧[あめふりこぞう]

雨のかみを雨師[うし]といふ雨ふり小僧といへるものはめしつかはるる侍童[じどう]にや

▼雨師…大陸の雨の神様。

日和坊[ひよりぼう]

常州の深山にあるよし雨天の節は見えず日和[ひより]なれば形あらはるると云[いふ]今婦人女子[ふじんぢょし]てるてる法師といふものを紙にてつくりて晴[はれ]をいのるはこの霊を祭れるにや

▼常州…常陸の国。
▼影…かたち。
▼日和…いいお天気。
▼てるてる法師…お天気が晴れることを願ってつくる紙細工の人形。てるてる坊主。

青女房[あをにょうばう]

[あれ]たる古御所には青女房とて女官[にょうくわん]のかたちせし妖怪ぼうぼうまゆ鉄漿[かね]くろぐろとつけて立まふ人をうかがふとかや

▼ぼうぼうまゆ…ぼうぼう眉。むかしの官女たちの眉毛がしていたお化粧。ぼうぼうまゆげ。
▼鉄漿…お歯黒。

毛倡妓[けじゃうらう]

ある風流士[たはれを]うかれ女[め]のもとにかよひけるが高楼[たかどの]れんじの前にて女の髪うちみだしたるうしろ影をみてその人かと前をみれば額[ひたい]も面[おもて]も一チめんに髪おひて目はなもさらにみえざりけりおどろきてたえいりけるとなん

▼うかれ女…遊女。
▼高楼…妓楼。女郎屋。
▼れんじ…櫺子。格子のこと。
▼髪おひて…髪が生えていて。
▼たえいりける…気絶しちゃった。

骨女[ほねをんな]

これは御伽[おとぎ]ばうこに見えたる年ふる女の骸骨[がいこつ]牡丹の灯篭を携[たづさ]へ人間の交[まじはり]をなせし形にして剪灯新話[せんとうしんわ]のうちに牡丹灯記[ぼたんとうき]とてあり

つぎへ

▼御伽ばうこ…『伽婢子』(1666)にある「牡丹灯篭」を引いたもの。京都五条の荻原新之丞のもとに二階堂政宣の娘・弥子の霊が通ってくるようになるお話。
▼剪灯新話…瞿祐の『剪灯新話』に載っている「牡丹灯記」という話が、『伽婢子』の「牡丹灯篭」のモト。喬生という男のもとに符麗卿の霊が通ってくるのがそのお話。