椎茸は▼極上等[ごくじやうとう]のものを選ばねばならぬ。伊豆の山で秋から▼寒中[かんちう]に出来る蝶花形[てふはながた]ならば至極結構であるが、若[も]し乾[ほ]したのならば暫[しばら]く之[これ]を水に漬けて軟かにする。また生ならばその侭[まま]で細く切って醤油と味淋[みりん]とで下煮をして、別に御飯の方へも能[よ]く味をつけて置いて炊きこむのである。この御飯は出来が上手だと、その味が美[うま]くて、大層食欲を増すものである。また別法としては、尋常[ただ]の御飯を炊いて飯櫃[おはち]に移す時に椎茸をまぜるのもある。これに▼豆腐の汁物を添へると味が美[よ]くなるばかりでなく、豆腐の蛋白質[たんぱくしつ]は、すべて▼茸類[たけるゐ]の毒をすひ取って一種の毒消し法となる徳用がある。