画図百鬼夜行(がずひゃっきやこう)風の巻

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風の巻

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○見こし ○せうけら ○ひゃうすべ ○わいら ○おとろし
○ぬり仏 ○ぬれ女 ○ぬらりひょん ○ぐはごぜ ○おうに
○青ぼうず ○赤した ○ぬっへっほふ ○牛おに ○うわん

○見越[みこし]
○せうけら
○ひゃうすべ
○わいら
○おとろし
○塗仏[ぬりぼとけ]
○濡女[ぬれおんな]
○ぬらりひょん
○元興寺[ぐはごぜ]
○苧うに[をうに]
○青坊主[あおぼうず]
○赤舌[あかした]
○ぬっへふほふ
○牛鬼[うしおに]
○うわん

詩は人心の物に感じて声を発するところ画はまた無声の詩とかや形ありて声なしそのことごとによりて情をおこし感を催すさればもろこし山海経[せんがいきょう]吾朝元信[もとのぶ]の百鬼夜行あればこれに学[まなび]てつたなくも紙筆を汚すときに書林何某需[もとむ]るに頻[しきり]なればいなみがたくて桜木にうつしぬよしその童蒙弄[もてあそび]ともならんかし

きのとの未の秋菊月 於月窓下 石燕自跋

▼無声の詩…漢画などで謳われる表現「画無声詩」を引いたもの。絵画は文辞をともなわずとも一篇の詩にひとしい物を含んでいるという考え。
▼もろこし…唐土。ちゃいな。
▼山海経…古代の地理書。『山海経図』あるいは絵巻などを通じて、当時から文中の鳥や獣や魚や異人が一部では知られていました。
▼吾朝…日本。じゃぱん。
▼元信…狩野元信。この絵本に収められている多くの妖怪のもととなる絵を描いたと伝えられています。
▼予…石燕。
▼書林…本屋。
▼いなみがたくて…断りづらく。
▼桜木にうつしぬ…印刷用の版木をつくった。
▼童蒙…ちびっこたち。謙遜語。
▼弄…おもちゃ。てなぐさみもの。「童蒙の弄ともならんか」などは昔の人のよく使う、自著に対する謙譲表現。
▼きのとの未…安永4年(1775)

鳥山石燕豊房
 校合門人 子興 月沙
画図百鬼夜行後編 近刻
 彫工 町田助右衛門
安永五丙申
 御書房 江戸日本橋通壱丁目
 出雲寺和泉掾
 書林 元飯田町中坂
 遠州屋弥七
開版

▼校合…版の刷り上りを校訂する作業。
▼子興…石燕の門弟。
▼月沙…石燕の門弟。
▼安永五丙申…安永5年(1776)
校註●莱莉垣桜文(2010) こっとんきゃんでい