これは▼羊羹[やうかん]のやうな鮪[まぐろ]の上肉[じゃうにく]を選ばねばければならぬ。その仕方は、鮪を五分四角ぐらゐに切って、別に味淋[みりん]一杯、酢一杯、醤油一杯の三色[さんいろ]を、能[よ]く煮つめて火から卸[おろ]した時に、前の鮪を入れて蓋[ふた]をして蒸らすのである。そして別に山葵[わさび]の卸[おろ]したのを、その中へ沢山[たくさん]入れてかき廻すのである。それから炊き立ての御飯へ、刻み葱[ねぎ]、焼海苔[やきのり]、紅生姜[べにしゃうが]などの薬味[やくみ]を載せて、前の鮪を汁ともに掛けるのである。美味とするには、山葵を十分入れて能[よ]く利[き]くやうにすることである。