一と日▼山海経[せんかいきゃう]を見ておもひらく▼箱根からこなたに野暮[やぼ]と化[ばけ]ものなしといへども何ひとつ不足なき▼お江都[ゑど]などなからむ既に▼坂東三八[ばんどうさんぱち]あればいでや怪力乱神[くわいりょくらんしん]を語[かたっ]て春なぐさみにと指をおるに▼百ものがたりの半[なかば]を得たりをのをの其[その]謂[いわ]れなきにしもあらざれば古事[こじ]つけ選怪興[せんくわいきゃう]と外題[げだい]にしるし一帖となすこと堅い奴には呵[しか]られ
▼安く永き日の▼なぐさみくさにかうようのむだ書[がき]して
筆にも紙を喰らはする▼ひつじの初春 真赤堂大嘘