跋
土毛木毛皆大屋様有物於
何処己栖成可与自得而
当世之鬼者鬼於通之
節分乃豆於裳不待福神与入替
西海江沙羅里散落理乃跡
雲於[爪+國]怪物捜
火於毛水仁言成誹諧体乃戯言
道成寺乃金仁為土
鱗形賀新版左旨売礼者善賀止
▼ツチモキモ ミナ オホヤサマ アルモノヲ
イヅクカ オレガ スミカナルベキ ト ジトク シテ
▼トウセイノ キハ ▼キヲトホシ
▼セツブンノマメ ヲモ マタズ ▼フクジント イレカハリ
▼ニシノウミヘ サラリサラリノ アト
クモヲ ツカム ▼バケモノサガシ
▼ヒヲモ ミヅニ イヒナス ▼ハイカイテイノ タハゴト
▼ドウジャウジノカネニセン ト
▼ウロコガタガ シンパン サウウマクウレレバ ヨイガ ト
▼安永四年乙未正月吉旦 ▼化物舘怪々 書
東都書林 大伝馬町三丁目 鱗形屋孫兵衛版
▼土毛木毛皆大屋様…大和朝廷の命を受けて紀友雄(きのともお)が藤原千方(ふじわらのちかた)を退治するときに詠んだ和歌「草も木も我大君の国なればばいづくか鬼のすみかなるべき」を引いたもの。
▼当世之鬼…いまの世の鬼。
▼鬼…「鬼」と「季」のかけことば。
▼節分之豆…節分の夜に鬼をはらうために、家の外にまかれる炒った大豆。ここでは、これが発射される前に鬼たちはいなくなっちゃうと書かれています。
▼福神…福の神。
▼西海江沙羅里散落理…西の海へさらりさらり。「厄払い」のなかにある悪いものを追い払う文句に出て来るもの。
▼怪物捜…豆まきもしたし、厄払いもしたし、ばけものみたいなものを捜すにはホネが折れる時期だ。当時はお正月に本が出版されていたので、大晦日の豆まきや厄払いは時季のもの。
▼火於毛水仁言成…「火を水に言いなす」は、いいかげんなこじつけ文章、詭弁のこと。
▼誹諧…おどけたもの。ことばあそび。
▼道成寺乃金…「清姫」が恋の炎で焼きとかした道成寺の「鐘」と「おかね」のかけことば。
▼鱗形…この本の版元「鱗形屋」と、「清姫」の着物に使われる模様「うろこ」のかけことば。
▼安永四年乙未…1775年。
▼化物舘怪々…詳細は不明。