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天縁奇遇(てんえんきぐう) 叙


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巻之下

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天縁奇遇 叙

天地之広大。万物有幾多邪。
万物之紛[(頤-頁)+青]。其動止廃起。又有幾多邪。
桃李之紅作春。雨之綻鳥者幾多而。
風々剪鳥者幾多乎。
梧桐之黄作秋。露之湿鳥者幾多而。
霜々[(朝-月)+(札-木)]鳥者。又幾多而。
鳥之嚶々。其音幾多。而虫之[口+要]々。其声幾多乎。
人生之有為也。寤寐俯仰幾多。
五感之動。七情之発。又亦幾多也邪。
凡動止廃起之浩繁。紛々紜々。
雖有百計然。而日夜算之。奚自得識焉。
然万物之作天地間。蓋数已定矣。
動止廃起之於万物際。不無亦有数已定矣。
仲尼[けものへん+希]韋曰。
衛霊公之所以為霊公者。何邪。
[けものへん+希]韋曰。
夫霊公之死也。卜葬於故墓。不吉。葬於沙丘而吉。
堀之数仭。得石槨焉。洗而視之。有銘焉曰。
不馮其子。霊公奪而置之。夫霊公之為霊也。久矣。
由是観之。霊公之為霊公。固数也。仲尼之所間。
[けものへん+希]韋之所答。亦数也。
荘子之取而述之数也。後々観而知者此言者亦数也。
然則一花之開。一葉之落。鳥之鳴。虫之[口+金]。
人之所思所夢。所趨所避。鼻口之所納嘗。手足之所蹈舞。
喜怒哀楽之所触物而感。得無不毫釐有数已定矣哉。
孟春一夕。所思万瑞。凄然不寐。読史至於嘉吉文安間々事。
既而搆思於一様新話。無何而成。未遑起艸。
友人蓬洲偶来坊。蓬洲善画及和文。
迺嘱之編輯。不日成巻。名曰天縁奇遇
一編之中。壱是皆寓言。
奚免大方家之笑焉。惟庶幾幼弟鬻子之玩焉者。
遺墓間衒売之戯。而知孝弟忠信。貞廉之瑞也。
蓬洲之編輯乎。余之有此事乎。
幼弟鬻子之玩焉者乎。蓋亦天地間之定数也。
今其謂天地間之定数也。豈亦知不天地間之定数也哉。

▼桃李…ももやすももの花。
▼梧桐…あおぎりの葉。
▼五感…目、耳、鼻、口、触。
▼七情…喜、怒、哀、懼、愛、悪、欲。
▼仲尼…孔子。
▼[けものへん+希]韋…孔子の「なぜ衛の霊公はふさわしくないほど立派な名前になったのじゃろう」という質問に答えた人物のひとり。この話は、『荘子』の中にあるもの。
▼衛霊公…衛の国の王。
▼卜葬…墓所をどこにするか占わせた。
▼孟春…初春。
▼嘉吉文安…どちらも足利時代の年号。嘉吉は1441-1443年、文安は1444-1449年。
▼蓬洲…神屋蓬洲。
▼偶来坊…たまたま家にやって来た。
▼天縁奇遇…この作品の題名。この叙の文から、この作品の原案が蘿月園のものであった事がうかがわれます。

文化九年壬申季春望日
書於本崗鳥号街。碧桃書屋南窓之下

蘿月野人[らげつやじん]

▼文化九年壬申…1812年。
▼望日…15日。
▼碧桃書屋…蘿月園の家。
▼南窓之下…南むきの窓のした。文机などがよく置かれてる位置。
▼蘿月野人…蘿月園主人。蓬洲とは親しい仲だったようで幾つかの作品に関わっています。

自序

春雨蕭蕭。無由愈寂。
木屐竹杖。蹣跚蘿月君碧桃書屋。
蘿月曰 我有一番新話在焉。子請綴之。
予曰。有之乎。童蒙之求。子之嘱又何辞焉。
然今世上。翕然称稗史家者皆鉅儒碩師
読破万巻之書。通達三教之旨。
馳弁[てへん+(離-隹)]藻之余。患才之多。而所為也。
其話柄有所帰。而其筆端自如有神矣。
予固用[門+規]天之見。用錐指地之識。
代而述焉。則縦有献芹之志。安免濫[竹+于]之譏。
蘿月曰。[口+不][口+不]不有搏奕者乎。為之猶賢乎已。
子其輯之。又孰曰非也。
予無辞拒焉。編為巻。
以童蒙之求我者。譬諸炊砂為飯
啻為烹之耳。実不可食矣云爾。

文化九年壬申季春三日神屋蓬洲題於礫水寓居

つぎへ

▼蕭蕭…しょぼしょぼ。雨の音。
▼木屐…げた。
▼蹣跚…ふらふら。
▼蘿月君…蘿月園。
▼稗史家…絵草紙や読本の作者。
▼鉅儒碩師…大学者。
▼管…くだをのぞいて天を見る。「葦のずいから天を見る」と同様。
▼献芹…そまつなものですが。
▼濫[竹+于]…ちからが足りていない。
▼炊砂為飯…いさごを炊いてめしとする。
▼輒…すなわち。
校註●莱莉垣桜文(2011) こっとんきゃんでい